手足の外科
introduction.01導入
手足の外科で大切なことは、整容的かつ機能的に良好な結果を得ることです。 面積は狭い部位ですが、骨・腱・神経・血管が細かく配置されており、解剖学的および生理学的に重要な働きをしています。対象疾患は、外傷、熱傷、先天奇形と多岐にわたります。
introduction.02ポイント
外傷では、皮膚が欠損している程度のものから、手や指が切断されている状態のものまで対応しています(図1)。切断された指の再接着術などでは、顕微鏡を用いて細い指の血管や神経を吻合します。もちろん、骨接合や腱縫合も行わなければなりません。私自身が形成外科専門医であり、また整形外科専門医でもありますので、私および医局員も対応する知識と技術を有しています。複雑かつ広範な外傷に関しては整形外科の協力も得て治療を行っています。
外傷でなくとも熱傷でも、皮膚が縮んだ状態で上皮化した場合、手指などが曲がった状態で引きつれ(拘縮)を起こして関節が動きにくくなります。引きつれを解除して、植皮や皮弁で皮膚欠損を再建して、関節の動きが回復するようにしています(図2)。
手や足の先天奇形の治療も同様です。例えば、手指の先天奇形の母指多指症や裂手症などでは、物をつかむ、つまむといった正確な動作ができるようにしなければなりません。加えて、人目に触れる部位ですので整容的な配慮も重要で、醜い傷跡が残らないように手術法を選択する工夫が必要です(図3、4)。また、多趾症など足趾の先天奇形では、足趾の形態を、靴をはいたり、歩行したりするときに支障のないようにしなければなりません。加えて、裸足になれば人目に触れる部位ですので整容的な配慮も重要です(図5)。
手足や手指・足趾は骨・腱・爪で構成されており、もとどおりに修復することは非常に困難です。再接着に成功したときは、患者さんも私どもも非常に嬉しいです。また、手・足の先天奇形のお子様が成長して、スポーツや勉強に頑張っていることを聞くと、私どもの努力が報われた気がします。
執筆 浜松ろうさい病院 形成外科部長 藤原雅雄